暮らす奥大和
Try Living in Okuyamato.
Organized by Nara Pref.

レポート 2024.5.17(Fri)

環境経済学を専攻する大学生が、イトバナシと過ごした3日間。

文=大窪宏美(equbo*) 写真=百々武(合同会社dodo)

奈良県中西部に位置する南和の中心地域、五條市。西側は和歌山県と大阪府に隣接し、古くから5つの街道が集まる交通の要衝として栄えてきました。現在の人口は約2万7000人ほど。国道沿いには商業施設が立ち並び、奥大和地域の中では市街地ともいえるエリアですが、近年は他市町村と同様に人口は減少しつつあるのも事実です。

そんな五條にやってきたのは、東京都在住の大学三年生・森藤啓介さん。物心ついた頃から歴史が好きで、特に聖徳太子のファンだったという森藤さんは、歴史深い奈良で暮らすことに憧れをもち、自身の希望で中学・高校は県内の寮制学校に進学したという行動力の持ち主です。

現在は一橋大学で環境経済学を学ぶ傍ら、地方と都市部の学生がつながることを目的とした「学生団体まとい」の代表を務めたり、休日を利用して日本各地の秘境や興味がわいた場所を巡ったりと、持ち前の好奇心とフットワークの軽さを武器に、日本中を飛び回っています。

伊達さん:はじめまして!

長時間バスを乗り継いでやってきた森藤さんを、ホスト役の伊達文香さんが笑顔で歓迎します。伊達さんは五條市出身。2017年に「株式会社イトバナシ」を起業し、インド刺繍のファッションブランド「itobanashi」や、カカオ豆と砂糖でつくるチョコレート専門店「chocobanashi」などを手がけています。

挨拶と簡単な自己紹介を済ませ、まずは3日間の宿泊先となる一棟貸しの宿「滞在交流ラボ 標(しるべ)」へ。

森藤さん:すごい!立派なお屋敷ですね~!

到着した「標」の雰囲気に、森藤さんは思わず声を上げます。歴史ある町家が建ち並ぶ新町通りの西端にあるこの建物は、お隣のフレンチレストラン「ラミー ダンファンス アラメゾン」が入っているお家の離れとして、幕末の時代に建てられたそう。

伊達さん:ここがキッチン、この先にシャワールーム、お布団はこの部屋にあって、廊下の先の階段からは二階の和室に上がれます。

明治・大正・昭和と増築が繰り返されたというだけあって、建物の中はうっかりすると迷子になってしまいそうなほど広く、老舗旅館を思わせるような立派な造りになっています。大きな窓にはめ込まれた手吹きガラス特有のゆらぎの先には、五條新町の瓦屋根が並ぶ穏やかな景色が広がり、中庭では森藤さんの来訪を歓迎するかのように、趣のある紅梅の老木が蕾を綻ばせていました。

伊達さんから一通りの説明を受けたところで、周辺の散策に出掛けます。これまでに五條市を訪れたことはあるものの、ゆっくり滞在するのは初めてという森藤さんは、この町の歴史や文化にも興味津々。

真っ直ぐ延びる旧街道沿いに町家が立ち並ぶこのエリアは「五條新町」と呼ばれ、平成22年には国の重要伝統的建造物群保存地区に指定されています。

伊達さん:詳しい町案内は明日、地元のNPOの方にしてもらえることになっているので、今日はなんとなく土地の雰囲気を感じてもらえれば。

町に広がる日常の景色の中、暮れ合いの散策を楽しみます。途中、たまたまお散歩中だった真っ白なグレート・ピレニーズとすれ違い、動物好きの一同は、そのふわふわの白熊のような姿に大盛り上がり。何気ないやり取りを交わすうちに、少し緊張感のあった森藤さんの表情もゆるみ、お互いの距離が近づいていくのを感じました。

イトバナシが出店している「ししゅうと暮らしのお店」や「chocobanashi 一ツ橋チョコスタンド店」にも立ち寄り、商品になる前のカカオ豆の焙煎所にお邪魔したり、事務所でスタッフの方々に挨拶をしたりと、伊達さんの日頃の取り組みについても、少しずつお話を伺います。

生まれ育った町を舞台に、想いをかたちにする伊達さんの言葉と表情には、温かさと力強さが満ちています。そのお話を聞きながら歩く五條の町並みは、積み重ねてきた歴史の上にこれから紡がれていく新たな物語が重なって、とても輝いて見えました。

散策を終え標に戻った一同は、伊達さんが淹れてくれたお茶をいただきながら一息つきます。辺りはすっかり暗くなり、そろそろお腹もすいてきた頃。伊達さんのパートナー・杉川幸太さんも合流して、行きつけのタイ料理屋「タイヨウ」さんへ。

いらっしゃいませ~!

タイ出身のお母さんが笑顔で迎えてくれます。魅力的なメニューの数々に目移りしながら、伊達さんと杉川さんのおすすめを参考に数種類を注文し、シェアすることにしました。

シンハービールとココナッツジュースという、いかにもタイらしい飲み物で乾杯し、今日一日を振り返ったり、それぞれの専門分野について語り合ったり。そうこうするうちに、テーブルには色とりどりの料理が次々と運ばれてきました。ソムタム・トムヤムクン・ガイトート・パッタイ・グリーンカレー……、本場さながらのタイ料理のおいしさに、会話も一層弾み、森藤さんが今後の進路を相談するシーンも。

というのも、伊達さんと共に会社を経営する杉川さんは、前職は広島大学の准教授として細胞学の研究をされていた方。環境経済学を研究するために大学院への進学を考えている森藤さんにとっては、大学の研究職を辞め、ビジネスでよりよい関係性を生み出そうと試みる杉川さんの現在地が、とても興味深いようでした。

最後には優しいお母さんがメニューにはない料理をサービスしてくれたりと、お腹も気持ちもすっかり満たされてお店を後にし、この日は解散となりました。

翌朝、伊達さんが用意してくれた地元の名物「柿の葉すし本舗 たなか」の詰め合わせで朝食を済ませ、ゆっくりとお茶を一杯飲んだら、二日目のスタートです。

この日は、徳島県美馬市から「chocobanashi」に短期スタッフとして働きにやってきたという谷さんも同行することに。午前中は、昨年秋にオープンしたイトバナシの新店舗を訪れ、お昼からは五條市で活躍する先輩たちのお話を聞きに行くことになりました。

全国に150台しかないといわれている伊達さんの愛車・デリカスターワゴンに乗り込んで、出発。国道168号を南向きに進み、ぐんぐん山を登っていきます。30分ほど走ると、「道の駅 吉野路大塔」に併設する茅葺き屋根の古民家に到着しました。

ここは、イトバナシが新たに始めた「picnicbanashi(ピクニックバナシ)」というお店。もともと「大塔郷土館」だった建物を整理して、お客さんが手ぶらでピクニックを楽しめるお店を始めたのです。

インドの職人が手掛けるラグとバスケットをレンタルして、公園や茅葺屋根の縁側に腰を下ろし、おくどで蒸し上げたプリンやサンドイッチ、コーヒー、クラフトビールやノンアルコールワインなどをいただくことができます。

この日はちょうど定休日だったので、杉川さんのお手製ハムが主役のサンドイッチ「ジャンボン・ブール」は次のお楽しみ。貸切で見学できることになりました。

伊達さん:営業時の様子を見てもらえるように準備するので、その間、隣の資料館をゆっくり見ててください。

伊達さんに促され、まずは隣接する大塔歴史資料館を見学。

2005年に西吉野村と共に五條市に編入された大塔村の歴史・民俗・文化を紹介する施設とあって、歴史好きの森藤さんは、一つひとつの展示を丁寧に見つめていました。

続いて、準備が整ったpicnicbanashiの店内に移動し、冬限定のこたつ席で、店自慢のプリンをいただきます。

地元の「さかもと養鶏」さんのこだわり卵と、明治16年創業の「植村牧場」さんの牛乳、オーガニックシュガーのみで作られたプリンは、カラメルソースもなしというシンプルさ。素材への信頼を感じる真っ直ぐな味わいに、森藤さんは「硬さがちょうどいいですね」という匠なコメントを残しつつ、そのおいしさをしみじみと噛みしめます。

プリンとコーヒーをいただいていると、改めてitobanashiを始めた経緯や取り組み、将来のビジョンなどについて、伊達さんからのプレゼンテーションが始まりました。

文部科学省が展開する留学促進プログラム「トビタテ!留学JAPAN」でインドを訪れたことをきっかけに、大学院在学中にitobanashiを創業した伊達さんは、「ローカルにこだわらずに、ローカルを盛り上げたい」と話します。その言葉には、地域に固執せず、でも地域への愛情深さを纏っているという、伊達さんの経営者としての柔軟さが感じられます。今まさに、自分の生き方を選択するタイミングに差し掛かる藤森さんと谷さんは、時折質問を交えながら、伊達さんの話をじっと聞き入っている様子でした。

次は、昼食を兼ねて、柿農家として約150年の歴史をもつ柳澤果樹園が手がける「cafe こもれび」に向かいます。五條市は生産量全国一位の柿の名産地として知られていますが、ここは広大な農園の真ん中でピザやデザートがいただけるカフェ。山の上にあり、決して便利とはいえない立地ながら、次々にお客が訪れる人気店です。

伊達さん:こんにちは~!

南プロヴァンス風の可愛らしい建物に取り付けられた木の扉を開くと、代表の柳澤佳孝さんが笑顔で迎えてくれました。

温かみのある落ち着いた店内に入り、手作りの石窯で焼きあげる自慢のピザを注文。

眼下に広がる雄大な景色を眺め、自社農園で育ったお野菜のサラダと焼き立てアツアツのピザを堪能します。

サービスで出してくださったデザートのヨーグルトには、柿のジャムとドライフルーツがトッピングされていて、実は今まで柿が苦手だと思っていたという森藤さんも、「柿がこんなにおいしいものだったなんて」と、驚いていました。

食後は、代表の柳澤さんにお話を伺います。

伊達さんが「クレイジーですっごく面白い人!」と敬愛する柳澤さん。農業・加工品等自社製品の開発・カフェ・直売所・グランピング施設を運営するほか、官民連携で地域の魅力と価値を整理し創造する「五條市地域商社株式会社」の取締役も務めておられます。

多くの事業を手掛け、持ち前の明るさからも一見すると順風満帆な人生を送ってきた姿を想像しますが、お話を伺うと、ここにたどり着くまでには、私たちの想像がとても追いつかないような苦労と失敗を乗り越えてこられていました。初対面の私たちにも、柳澤さんは「何かの糧になれば」と、ご自身の経験を包み隠さずお話してくださり、現在に至るまでの経緯を聞き終えた頃には、映画を一本見終わったような心地でした。

柳澤さんに感謝を伝え、お土産に先ほどの柿ジャムをいただいて、ほこほことした気持ちで山の上の農園を後にします。

続いて、chocobanashiの商品の製造工程を見学するため、五條新町にある加工所へ。

到着すると、スタッフの柗本さんと岡さんが今まさにカカオ豆からチョコレートを製造する作業を行っているところでした。ここからは五條市の職員である八釣さんも合流し、中に入って作業を見せてもらいます。

マスクとヘアキャップを装着し、衣類のほこりを念入りに落とします。カカオ豆特有の甘い発酵の匂いに包まれて、一つひとつの工程や素材について丁寧に説明を受けながら、実際の作業を見学。

硬いカカオ豆が時間と手間をかけてなめらかなチョコレートになっていく様子は興味深く、何よりもやはり、お楽しみの試食タイムには、森藤さんからも無邪気な笑みがこぼれていました。

一同がチョコレートで盛り上がっていると、この後、町案内をしていただく中純宏さんが到着。中さんは五條の町の活性化を目的とする「NPO法人 大和社中」の理事長さん。今日は森藤さんの滞在に合わせて、この町の歴史や文化を紹介するため駆けつけてくださいました。

チョコの製造工場からほど近くにある「みよし邸」で、中さんから町の概要や歴史についてざっと説明を受けた後、町歩きへ繰り出します。

中世に起源をもつ御霊神社御旅所を中心に大規模な町家が軒を連ね、南大和の政治経済の中心地として栄えた五條村と、二見城のあった二見村とを繋ぐように、城下町や宿場町として発展してきた五條新町。建築年代が明らかな民家で日本最古の「栗山家住宅」を筆頭に、漆喰で塗りこめられた重厚な町家が真っ直ぐに並んでいます。

ここでも森藤さんの歴史好きが発揮され、現在の動きと歴史を織り交ぜながら丁寧に説明してくださる中さんのお話に、質問を交えながらしっかりと耳を傾けていました。

五條新町を一通り歩いて標に戻った一同は、夜の交流会に向けて準備を開始。

森藤さん、伊達さん、谷さん、仕事を終えたイトバナシスタッフの圡野さん、岡さん、植草さんも加わって、料理好きの杉川さん指揮のもと、調理に取り掛かります。

今夜のメニューは手作り餃子。しかも、皮から作る本格派です。

大きな鍋に小麦粉とお湯を入れ、森藤さんが力を入れて捏ね上げていきます。できあがった生地を小さく切って丸く伸ばす間に、中身の餡も用意。スタッフの植草さんと岡さんを中心に、たっぷりの挽肉に香味野菜や調味料を混ぜ合わせて練っていきます。

餃子の皮って自分で作れるんですね……。

森藤さんは初めての作業に戸惑いつつも、みんなでワイワイやれば楽しい時間。杉川さんから部活の合宿さながらの厳しい指示が飛ぶなか、キッチンは大盛り上がりです。

皮と餡、それぞれ準備が整ったら、机をぐるりと囲んで成形作業開始。

これがなかなか難しく、餡がはみ出したり皮が破れたりしないようにとそれぞれに工夫するうち、だんだんと手早く綺麗に包めるようになり、大鍋いっぱいに練りあがった餡はいつしか空っぽに。そして、その頃には餃子が焼ける芳ばしい香りが、キッチンから会場となる和室へと漂っていました。

和室では、包餡作業を終えた森藤さんと中さん、そして今夜偶然標に滞在予定でご一緒できることになった川越さんも到着し、お互いに自己紹介をしながら交流を深めていました。

川越さんは伊達さんと同じく「トビタテ!留学JAPAN」の卒業生で、同期ではなかったものの、共通の知人を通して知り合った仲。現在は球団関係のエンジニアとして働いているということで、大の野球好きの中さんと大いに盛り上がり、本人の気さくな人柄もあり、あっという間に打ち解けて、初対面同士とは思えないほど和やかに交流していました。

できあがった焼き餃子と水餃子、ご近所の鶏屋さんから仕入れた新鮮な鶏のたたきなど、宴会にピッタリのごちそうを囲んでいよいよ乾杯です。

ビールや焼酎の他、地元で300年以上続く酒蔵「山本本家」さんとのご縁をきっかけに伊達さんが自ら作業を行い、共同で醸造した希少な日本酒も登場。仕事を終えた柗本さんも加わって、仕切り直しの乾杯。

何気ない世間話やお酒の席だからこそできる真剣な話も交え、笑い声が絶えないままに、楽しい夜は更けていきました。

最終日の朝、昨夜の余韻をほんのりと残しつつ、近くのスーパーで飲み物を買って予定通りに出発。昨日合流した川越さんも一緒に、今日は五條文化博物館へ向かいます。

1995年、建築家・安藤忠雄さんによって設計され、その円筒の形状から「ごじょうばうむ」の愛称で親しまれるこの建物は、地域の歴史を総合的に展示・研究する施設です。

屋外の階段を上り、3階にある入口から入館。幸運にも、学芸員さんに案内してもらえることになりました。

受付を済ませ、エントランスで施設の大まかな説明を受けて、旧石器時代から中世にかけての五條が紹介されている2階へと進みます。

五條市役所文化財課の課長で考古学を専門とする前坂さんに解説してもらいながら、縄文時代の土器や石器、古墳時代の鉄製品など、展示品を見ながら少しずつ時代を進んでいきます。森藤さんは頷いたり質問をしたり、昨日までと違った観点から五條への理解を深めている様子。

さらに階段を降り、近世の動きや五條の変遷、伝統行事などの展示の案内は、文化財課主任で学芸員の山本さんが案内してくださいます。

ひとつずつの展示を、まるで実際に目にしてきたようにイキイキと解説してくれる山本さんのお話に、皆自然に引き込まれ、胸に残る有意義なひと時を過ごすことができました。

じっくり展示を見学していると、気が付けばお昼時になっていました。車で五條新町に戻り、明治15年創業の歴史あるお食事処「山直」さんで最後のランチタイムです。

森藤さん:お出汁のいい香り!

店の前に到着すると、紫色の暖簾をくぐるまでもなく、ほっとするような出汁の香りが漂ってきます。ここでもまた、おいしそうなメニューの数々に迷いつつ、鍋焼きうどん、カレーうどん、大きな海老の天ぷらと甘辛い牛肉がのった天肉うどんなど、それぞれに注文しました。

カウンターと座敷席のある店内は満席。お店の中は老舗のお食事処らしい温かな雰囲気で満ちています。居合わせたお客さんの様子からも、町の人にとって大切な、長年愛されてきた場所であることが伝わってきました。

食事を終えて標に戻った一同。あっという間に、お別れの時です。テーブルを囲み、それぞれに今回の3日間で感じたことを振り返ってもらいました。

森藤さん:五條という場所は、電車を降りて、ちゃんと歩いて、暮らしている方に会って、ということをしたのは本当に初めてで、名前と場所となんとなくの地形くらいしか知らなかったんですけど、昔から続いてきたものを皆さんががんばって残されていっていることを知って、しかもそれを活用してまったく新しいことをやっている、そのひとつの融合が面白いなと思って、興味深かったです。

特に印象に残っていることを聞いてみたところ、森藤さんが「いくつかあるんですけど」と苦笑いしながら「昨晩の飲み会……」とコメントしたものだから、一同は大笑い。でも、その後、真面目なコメントを残してくれました。

森藤さん:五條でいろいろやられている方々、いろんな年齢層の方までが 初対面の私にもすごく楽しく接してくださって、地域のコミュニティがすごくいいなぁと思いました。他に、巡ったところだと、大塔村の雰囲気が印象的でした。

 

もともとあった古民家で、しかも、そこにあったものを使ってプリンを作られているとか、そういう、本来というか、多くのところで昔のものが使われずになくなっていっていると思うんですけど、昔の人が考えもしなかったような使い方でその道具が再び脚光を浴びるというのは、昔、それを使っていた人たちは、その様子を見ることはできないわけですけど、きっと幸せなことなんじゃないかと思いますし、ぼくもそういうことができたらいいなと思いました。

続いて、伊達さんの番です。

伊達さん:えー、そうですね、すごいしっかりした答えをしてくれてどうしよう……(一同笑)。そうですね、面白かったです。私が運転しているときに、助手席に座って好きなものの話を色々してくれて、なんか、こんなふうに好きなものにいろいろ関心を持ったまま大人になっていく人っいいなぁと思えて。

 

で、彼が言ってて私もそうだなと思ったのは、「地域を活性化する」みたいなことにはあまり興味がなくて、「暮らしを一緒に楽しむとか、一緒に過ごさせてもらうのがいいなと思ってるんです」みたいな話をしてくれて、イトバナシというか、私たちも、「あるものをよりよく使う」もそうだし、「活性化」とか別に言ってるわけでもなく、自分たちの縁とゆかりのある場所で、楽しく仕事をしていけたらいいなと思っているので、そこがすごく近い価値観なんだなと思えて、うれしかったです。またぜひ、五條にもちょくちょく来てください。ありがとうございました。

そして、杉川さん。

杉川さん:この事業は、森藤くんに移住体験してもらうことが目的だと思うんですけど、こういうきっかけが、私たちにとってもすごく刺激的というか、五條のどこを連れて行こうかと考えるのもそうですし、スタッフの新たな一面を見れたり、すごくいいきっかけだなと思います。ひょんな出会いですけど、また、機会あればいいなと思いますし、進路に迷ったら、いつでも相談してください(笑)。ありがとうございました。

まだ学生生活が続く森藤さんが、すぐに移住するということは恐らくないでしょう。しかし、この3日間で生まれた縁は、確かにここで結ばれたようです。たとえ、その町に住んでいても、遠方での仕事や忙しない日常に追われ、地域と繋がっているとはいえない暮らしぶりもあると思います。それとは逆に、離れていても地域との確かな結びつきを感じられるような関係性もあるのではないでしょうか。

「こんなふうに好きなものにちゃんと関心を持ったまま大人になっていける人っていいなぁ」という伊達さんの言葉通り、好奇心と行動力を持ち合わせた森藤さんだからこそ生み出せる、地域との新しい関わり方があるように思います。今回芽吹いた縁が、今後どんなふうに育っていってくれるのか。春を待つ季節のような、ワクワクする予感を感じられる、そんな「暮らす奥大和 五條編」となりました。

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